レジェンドインタビュー#1 野寺さん カーブの先を読み続けよう
今回の記事では「レジェンドインタビュー」と題して、長年当社に勤務している社員に、歴史を振り返ってもらいました。パソコンが普及し始めたころのエピソードや、今では想像できない昔の職場での働き方、などなど、時代の変遷を実際に見てきたからこその話が盛りだくさんです。ぜひご覧ください。
はじめに
こんにちは。編集メンバーの小林です。今回お聞きするのは、インテージテクノスフィアの前身である、社会調査研究所から現在まで40年以上当社で働き続け、主力サービスの開発や、若手育成、品質管理などにさまざまな分野で活躍されたレジェンドな社員 野寺さん!果たして、どんな話が聴けるのか、楽しみです!
ーーー40年もの長い間、当社で働かれている野寺さんですが、入社当時はどんなことをされていたんですか?
新卒入社時は調査システム部という、アンケート調査の結果を集計する部署に配属になりました。2年目に部署の一部業務が長野の事業所に順次移管することになり、長野事業所の社員に新たに業務を覚えてもらう必要が出てきました。その際、覚えたてだからこそ「何がわからないか」がわかるというメリットを活かして、何度も長野に通って業務とツールの使い方を説明しました。その後、新入社員研修なども担当することになりますが、その時の経験が活きたと思います。
ITの変遷
新卒からしばらくして、当時趣味の世界からビジネスに使われはじめたパソコンに興味を持ち、自主的に勉強してデータチェックツールなどに活用しました。でも、上司から「そんなおもちゃを使ってチェックするなら、電卓を使う方が正確だ」と否定されたのを覚えています。
パソコンやワークステーションの勉強をずっと続けていたら、新しもの好きが見込まれて、新技術を研究する部署に異動して、現在もLinuxとして使われているOS(UNIX)とそのプログラム(C言語)に取り組みました。インターネットがない時代で、英語の文献が情報源なので、技術を身につけるのも大変でしたが、新しいことを知ることが面白く熱中して勉強していました。
1990年あたりから、システム部門以外のオフィスにもパソコンの導入が進み、次々に新しいハードウェアやソフトウェアが世に出回りました。この時代は楽しかったですね。仕事に取り入れるため、学生時代よりも多く勉強をして社内で一番乗りを目指した時期もありました。こんなことが出来たのも、納期を守れば自由に新しいことに取り組めた環境があったからこそで、当時の上司には感謝しています。
その後、パソコン、ネットワーク、ワークステーション、のようなキーワードが急速に流行り始めて、少しずつ業務として受注するようになり、いろいろな部署の営業から客先同行を求められるようになります。それが組織的に発展して、さまざまな業務部署から開発を請け負う部署に10年ほど在籍して、プログラマーなど技術的な担当から、システムエンジニア、リーダーと順々に役割の段階を経て、開発全般をマネジメントする役割になりました。
その間、現在も現役システムとして活躍している、せいほしけんネット、すこやかサポート21、出版POSシステムのような大規模システムの初期開発のプロジェクトマネージャーも担当しました。
ーーー今でも当社の主力商品であるシステムの開発に関わっていたのですね!
開発部門時代の思い出
ーーー開発部門時代、いちばん印象に残っていることは何ですか?
お客さまの中でも、コンピューターを使って実際の作業を行う、いわゆるエンドユーザーとの関わりですね。システムに詳しくない方がほとんどでしたし、今のようにコンピューターを誰でも使える時代と違い、「キーボードを人差し指だけで操作」、「パスワードがふせんで貼ってある」のは普通の光景です。システムの操作説明会をすると、システムを操作する以前の問題で、漢字変換や文字入力などWindowsの使い方の説明で、半日以上かかることもありました。
こんな面白い話もありましたよ。
電話で問い合わせ対応をした時、「フロッピーディスクをケースから取りだしてください」ってお伝えしたんですね。そう言ったら、プラスチックのケースから、ディスクを取り出す……と、思うじゃないですか。
ーーーええっ、ま、まさか……。
フロッピーディスク本体のカバーを外して、中身のディスク板を取り出しちゃったんです(笑)
ーーーあああああ。やっちゃいましたね。完全に壊れちゃうやつだ。実際の場面を想像すると、インパクトがありますね。
あとは、「調子が悪いのは、環境(OS)のせいかもしれません」と言ったら、「いえ、窓際のいいところに置いているので、環境は大丈夫です」と返答されこともありました(笑)
ーーー「環境」違い!まるで落語のような話ですね。でも、パソコンがあまり普及していない時代には、あるあるなことだったのでしょうね。お客さまと接する時、心がけたことはなんでしょうか。
「システムの中身を知っている」からといって、上から目線は厳禁で、お客さまと対等に真摯に付き合うことですね。わかりやすさを大切に、多少アバウトでも全体理解を重視して、仕様書は軽く、専門用語を極力使わず、図を多く使うように努めました。その甲斐あって、パソコンに不慣れで気難しいと言われていたお客さまにもご理解いただくことができ、「あんなに難しいお客さまにどうやって説明したの?」なんて聞かれて、レクチャーを頼まれたこともありました。相手目線の言葉と、システムを導入することで相手にとってはどんな良いこと(メリット)があるかを考え、専門用語は平易な言葉に言い換えて、接し方に注意することが重要だと思います。
ーーー相手目線の、真摯で誠実な対応が重要なんですね。この姿勢は時代に関係なく大切ですね。
研修時代の思い出
ーーー野寺さんは、新入社員研修にも熱心に取り組まれたと聞きました。その時の様子を教えてください。
2000年代前半は、毎年2か月間実施しているシステム系部署配属の新入社員研修のリーダーを数年間担当していました。新卒すぐに、長野事業所の社員に業務を教えていた経験を活かし、新入社員研修には熱心に取り組みました。また、知識を習得する面でも、後輩に教えることで自分の知識の定着や新たな応用につながるメリットを知りました。
また、当時は、自分の希望がリサーチ部門だったのに希望かなわず、システム部門に配属されてガッカリしている子たちもいました。彼らにシステムの面白さややりがいを伝え、システム部門でもやっていけると思えるようにすることも裏のミッションと考え、彼らと会話を重ね、親身に相談に乗りながら、サポートしました。
私が担当した時の新入社員は、就職氷河期時代を勝ち抜いてきた世代ということもあり、優秀な人材が多く、今では立派な中堅社員として活躍しています。幹部職になっている方もたくさんいますし、部長になっている方もいます。また、現在の社長である饗庭さんや、専務の酒井さんの新入社員研修も担当しましたね。
ーーーうひゃー、そうそうたるメンバーですね。
新入社員研修で関わった方々が、今活躍している姿を見ると感慨深い思いになります。また、私が定年の時に、新入社員研修を担当した社員のみなさんや同僚が寄せ書きのフォトブックを作ってプレゼントしてくれました。嬉しかったですね。
現在:品質管理部門
ーーー野寺さんといえば、「品質管理のプロ」というイメージもありますが、どのくらい担当されているんですか?
長く開発部門を担当しましたが、顧客企業向けシステム開発部署の責任者を経て、インテージホールディングスの内部監査室の責任者を7年担当した後、2014年にインテージテクノスフィアが設立した時に品質管理室へ異動しました。内部監査室でも一部に品質問題を取り扱っていたので、これを合算すれば15年間品質管理に携わってきたことになります。
ーーー15年!長いですねー。具体的にはどのようなお仕事をされているんですか?
私は、品質管理業務の中でも特に教育系を担当しており、品質教育に力を入れています。例えば、発生してしまった事故やヒヤッとした出来事なども含め、実際の事例を使って品質管理について学ぶ「品質事故ケーススタディ」という社内研修を開催しています。こちらの研修については、企画・コンテンツ作成・講師を一人で担当しています。来年早々には新作の研修を実施する予定です。
ーーー「品質事故ケーススタディ」はグループ会社からも参加があり、毎回60名くらいの受講がある人気の研修ですよね。
品質管理は一見、堅苦しいとか地味なイメージがありますが、企業の経営で大事なのは「安全第一、品質第二、生産第三」といわれるように、事故が発生すると甚大な影響を及ぼす大きな要素です。しかも、一人一人が注意する必要があるので、社員の教育が大切です。
例えば、「業務引継ぎガイド」や「業務引継ぎテンプレート」を作成し、ガイドを読んでテンプレートを活用すれば、引継ぎのポイントが押さえられるよう工夫しました。このような仕組みを整えることで、属人化防止を図っています。
ーーー引き継ぎは、業務についてよく理解している人が、今までやったことがない人に教えることが多いので、漏れなどが発生する危険がありますもんね。わからない人にわかりやすく伝える仕組みは、野寺さんの新入社員研修の経験から繋がっているのだと感じました。
オフィス今・昔
ーーー昔の職場や仕事の仕方ってどんな感じだったんですか?
コミュニケーション手段
今は、1人に1台コンピューターとスマートフォンが支給されていて、メールやチャットのやり取り、ビデオ会議も普通ですが、私が新人の時のコミュニケーション手段の基本は、対面での会話でした。私はシステム部門担当で、リサーチ部門の社員とコミュニケーションを取るのが多かったのですが、デスクのある2Fとリサーチ部門のある3Fを行ったり来たりして会話をしていました。足腰が鍛えられましたよ。
また、メールがない時代、電話は数名で1台の固定電話のみなので、何か伝達する時には、直接会話をするか、いない時は机にメモを置くのがコミュニケーションでした。
始業時刻
現在はフルフレックス制なので、ある程度自由に始業時刻を決められますが、昔は固定勤務なので、始業時刻は9:00に決まっていました。朝はひばりヶ丘ビル中央通路に2台、タイムカードを打刻する機械があり、9時直前は行列ができていました。1分でも遅くなると赤字で出社時刻が印字され「遅刻」とされてしまいます。「遅刻」だと遅刻届を出さねばならず、半休を取るか給料が削られてしまうかの2択になります。そのため、8:55頃になると駅から会社まで全力疾走する大勢の社員が毎朝の光景でした。
ーーー遅刻の場合の扱い、なかなか厳しいですね。それでも、ギリギリを攻めてしまうのが人間の心理なんですかね(笑)大勢の社員が会社に向かって全力疾走する光景、想像するとちょっと面白いですね。
コンピューター
現在は、一人一台PCが支給されていますが、昔はありません。ビル2Fの奥に50台ほどのホストコンピューターの端末があり、この空き待ちにいつも行列ができていました。そして、端末でプログラムを修正した後は、結果画面が小さく見づらいため、地下1階にある大型高速プリンターのもとに行き、印刷して結果を確認する場合が多くありました。テストデータのサイズが大きいと自分でオープンリールテープをセットしなければならず、その待ち時間も加わり出力されるまでさらに時間がかかります。プログラムの修正が一発で上手くいかないことも多く、上記の作業を繰り返すこともしばしば。今となっては、待ち時間にこんなに時間を消費してしまって、採算が取れていたのか?と思います。ただ、2Fでの端末待ち⇒地下での印刷待ちの立ち話の時間が社員間のコミュニケーション(雑談、仕事の話)の場になっていました。この時間が、交流や情報交換の重要な機会となっていたのかもしれませんね。
ボトムアップでつくられた、フラットな文化
ーーー40年間ずっと当社で働いている野寺さんから見て、インテージテクノスフィアの社風は、どのようなものだと感じますか?
インテージテクノスフィアには、男女の差別がなく、誰でも発言しやすいフラットな文化があると思います。ただ、それは、最初からあったものではありません。
入社してから現在までの40年以上の間、当社の女性の地位向上の変遷を見てきました。
正直な話、入社当時は、「給料に男女差がある」、「女性は制服に着替えて始業時刻30分前には出社し、お茶だし・机ふき・灰皿洗いを行う(その時間の賃金は出ない)」、「女性の名刺は角が丸く男性のものより一回り小さい」、などの光景がありました。今とは別世界ですよね。
そんな中、労働組合が牽引して、職場改善に多くの社員が積極的に意見を出して、現在の状況に改善されました。今は、先ほど話したような格差はありません。
現在、男女差を意識しない、フラットに意見を言える雰囲気があることは、ボトムアップ的にみんなで社風を作り上げた経緯があったからこそと思います。
これからに向けて、メンバーへのメッセージ
ーーー最後に、インテージテクノスフィアのメンバー、特に、若い世代にメッセージをお願いします。
今は人的資源含めたコストの制約を強く意識して仕事をしなければならない環境にあるため昔よりも難しいと思いますが、向上心をもって、一歩、二歩先を見て仕事に取り組んでいただきたいです。わかりやすいように、すこし例え話を。
私は昔からバイクによく乗っていて、峠道を走るのが好きです。バイクで峠道を走る時、山道は曲がりくねっていて先が見えにくいのですが、目先のカーブだけ見ていると安定しません。上手く走るには、常に先のカーブを意識しながら進むのがコツなのです。
皆さんの仕事も、もしかしたら今は自分が描くゴールとは方向性が違い、不本意な役割かもしれません。先が見えず、不安になることも多いと思います。しかし、目先だけではなく、その先やゴールをしっかりみていれば、今の仕事にもそれに通じるものを見い出して進んでいけるはずです。先を見据えて、頑張ってください。
ーーー目先のことだけにとらわれず、ゴールを念頭に置いて考えることが大切なのですね。野寺さん、貴重なお話をありがとうございました!!
編集後記
今回の記事では、当社に40年勤めている野寺さんから、ITの変遷、お客さまとの関わり、オフィス環境や社風の変化など、さまざまなお話を聴くことが出来ました。まさに温故知新で、今の仕事に活かせそうなヒントも多く散りばめられており、人生においても勉強になりましたし、インテージテクノスフィアにより愛着がわきました。
インタビューの中で、これからチャレンジしてみたいことを聞いたところ、「若手~中堅当時に新しいものを習得することに熱中したときのように、なにか熱中するものを見い出してみたい」とお話しされていました。いくつになっても新しいこと・熱中するものを見つけたいと話す野寺さんは嬉しそうで、私も大いに刺激を受けました。野寺さんのように、熱い気持ちで頑張るぞ~!