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LLMの魔法を社内にかける!社内向けLLM講習会の舞台裏

はじめに

近年「生成AI」という言葉をニュースで聞かない日はないくらい、2023年から流行している技術の1つです。

インテージテクノスフィアでもAI開発を数多く手がけており、特にLabel Noteという動画解析DXソリューションに力を入れております。

生成AIの社内利用についても積極的に推進しており、2023年4月に社内ルール整備が完了し、一部社員のトライアルを経て、2023年8月にはMicrosoft Copilot利用環境が全社に提供開始されました。

なので、2024年には「生成AIを利用していますか?」と質問したら、多くの社員が「はい」と答えると思っていました。
思っていたんですよ…。

かなり恥ずかしいのですが、そんな思い込みをしていた私達の反省とその後の取り組みを今回お話しします。


1.CTOオフィスと「生成AI活用の推進」

私は、CTOオフィス担当の中村です。
CTOオフィスは、「CTOの役割達成のための企画実行部隊として、各種検討・評価・提案・展開・支援を担う」活動組織で、設立されて今年で2年目となりました。

CTOオフィスでは毎年複数のテーマに取り組むのですが、今年筆頭に挙げているテーマは「生成AI活用の推進」になります。
「生成AI活用の推進」について「生成AI技術を利用した業務変革(業務の改善・革新・顧客提案への活用)」という目標を掲げ、私を含め3名で活動中です。

CTOオフィスでは、全従業員にMicrosoft Copilotの利用を推奨しています。Microsoft Copilotとは、すなわちMicrosoft 365利用法人向けの生成AI利用環境のことです。

法人向けのMicrosoft Copilot(旧 Bing Chat Enterprise)では、ユーザーのプライバシーとデータの安全性が保障されています。

プライバシーとデータの安全性が高いサービスのため、ユーザーの情報は適切に保護され、入力された内容はAIの学習に利用されることや、情報漏洩することがありません。

Microsoft 365担当者の同僚が、利用開始時に「安心して業務利用ができる環境を全員に提供できた。」と話をしてくれたのを思い出します。

2.利用環境を整えただけではダメだった

ところが、利用開始から数か月経った年末、CTOオフィス内にて「業務利用提案などで生成AIが浸透している様子が見えない。」という指摘が挙がりました。

CTOオフィスではMicrosoft Copilotと並行して、GitHub Copilotの導入も同時に実施していました。


社内利用環境は多数ありますが、利用が浸透していない可能性があるため、「浸透策を考えるためにも、まずは現状把握が必要」となり、実態把握をおこなうべく全社員に向けて2024年1月にアンケートを実施しました。

その結果をメンバーと確認したところ、想定してなかった事実が見えてきました…。

・ChatGPTの認知率は100%なのに、Microsoft Copilotの認知率が50%くらい

・生成AIは外部に情報漏洩するリスクがあるため、仕事で使わないようにしている人が一定数いる

・よいプロンプトの書き方がわからない、回答内容のチェックが面倒、などの理由で使っていない人が一定数いる

Microsoft Copilotの認知率は想定よりも低く、Copilotの特徴(外部に情報漏洩するリスクがない点など)が伝わってないことに私は衝撃を受けました。
前任者の頑張りが伝わってなかった…。

一方、導入したGitHub Copilotを使い込んでいる人も多くいました。
「生産性が違いすぎてGitHub Copilotなしではもう耐えられない!」といった意見もたくさんありました。

アンケート結果から、社内で利用や浸透度合いに大きな差が出てしまっている事実が見えてきました。

3.もっと利用率を上げねば!企画会議

アンケート結果を踏まえた企画会議では、「初心者向けと既に活用している人向けに対応する必要がある。」という結論になり、先に初心者向けのサポートが必要と考え、早速アクションの検討を開始しました。
初心者向けを先にした理由は、利用率向上が最優先事項だと考えたからです。
使っていないものは業務適用もできません。

しかし、講習会を開くにもどうやって行うべきか、頭を抱えました。
当社は、社員が500名弱おり、事業所は長野(2拠点)とひばりヶ丘(本社)の3拠点に分かれています。

初心者の人が来てくれないと困りますが、アンケートは完全匿名で実施したため初心者の区別はつきません。
初心者の区別がつかないため、講習会は全社員に対して開くしかありませんでした。

オンラインで講習会を実施すれば難しくはありませんが、オンラインの場合だと、初めて利用する人やプロンプトの書き方がわからない人に対してサポートしづらい状況になりがちです。
そこでメンバーと話合い、最終的に

「講習会は出向いて各事業所で実施。CTOオフィスの本気を見せる。」

パワーーーー!!!で押し切る感じですが、それくらいの心意気で決まりました。

とはいえ、事業所によっては会議室が小さいところもあり、最終的に2週間で全23回の開催が決定しました。
その後、客先勤務や子育て中などで出社できない人もいるため、最後にオンライン開催を追加したので全24回となりました。

CTOオフィス内の他メンバーだけではなく、CTOからも「3名でそんなに回数こなして大変なのでは?」と心配されましたが、「社員全員が生成AIを使うようになってほしい!使っていない状況で業務利用なんて夢物語でしかない!」という思いで、準備は進んでいきました。

また、この時点で「生成AI講習会」から「LLM講習会」に名称変更しました。
私たちはシステム開発を生業としており、LLM(Large Language Model)大規模言語モデルを利用したシステムを開発していくことが命題です。

「生成AI」と呼ぶとサービス利用に特化してしまう危惧があり、名称を変更することにしました。

4.LLM講習会実施 ひばりヶ丘編

そうして始まった講習会ウィーク。
最初の1週間はひばりヶ丘事業所にて午前と午後、毎日2回開催しました。

そこで発見されたのが「Microsoft系の資格取得者は要注意!」

Microsoft Copilotは会社アカウントで利用すれば「商用データ保護」機能により、入力情報がAI学習に利用されることや、社外に持ち出されることがありません。 

発表資料より「商用データ保護」確認方法

一方、Microsoft の資格取得は、個人メールアドレスを利用することが公式から推奨されており、資格がメールアドレスに紐づくので、会社アカウントと連携して個人アカウントを利用されることがあります。

講習会で確認を行ったところ、資格保有者が気づかないうちに個人用アカウントでログインしたままになっており、せっかくの「商用データ保護」が設定されてない状況が複数発見されました。

本件は講習会を対面で実施しなかったら、まず気づけなかったと思うので、本当によかったと思いました。

5.LLM講習会実施 長野事業所&長野駅前事業所編

2週目は3名で手分けして、長野事業所および長野駅前事業所の2か所同時に、2日間合計13回実施されました。

私たちはコロナ禍以前から、ひばりヶ丘と長野の合同チームで仕事をすることが多々ありました。

ただ、対面で顔を合わせないことも多かったため、今回の講習会では「はじめて/久しぶりに、実物にお会いしましたね!」と多くの人に声をかけてもらいました。

会議室が広くない長野駅前事業所は、1回4-8名と少人数での実施となり、開催回数が増えましたが、無事すべてを終えることができました。

長野駅前事業所の開催場所「なごみ」眺めがよい

6.LLM講習会実施 経営層

最終日には、社長をはじめとする経営層にむけたハンズオンを実施しました。

さすが社長は、ChatGPTもCopilotも非常に使い込んで仕事に利用されていました。
役員時代にUnity の社内ゲームコンペに初心者で参加してたフットワークの軽さは健在だなと思いました。

利用方法の説明は不要そうだったため、講習会の途中からは、グループ各社での開発状況やLLMの最新状況などについてのディスカッションが主体となりました。

ClaudeとCopilot、ChatGPTのそれぞれの長所や短所、Github Copilotなどすでに社内導入済みのサービス類の利用状況など、かなり深く話できました。

7.そして次のステップへ

こうして今回のLLM講習会が終わりを迎えました。

講習会参加者に、アンケートをその場でお願いしたところ、330人近くの回答が集まりました!
本当にありがたいことです。

今回直接対面でお伝えすることで、利用に不安があった人にも、面倒と思う人にもこちらの意図はお伝えできたと思います。

しかし、今後の進め方や目標への進め方は、アンケート結果から変えていく必要がありそうでした。
ふりかえりや、むきなおりを実施し、次の手を打ちたいと考えていきます。

再度アンケートを実施したら「生成AI利用していますか?」の質問には、もっと多くの人が「はい」と答えてくれるはずですし、そうなるよう、これからもCTOオフィスとして頑張っていきたいと思います!


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