ようこそマスターの新世界へ #3「商品を分類するためのルール・定義」
ようこそマスターの新世界へシリーズの第3回です。
第1回、第2回の記事はマガジンよりご覧ください。
今回は、「商品マスター」を構築するうえで大切な分類のルール・定義についてのお話です。
はじめに
長野は毎日寒い日々が続いています。
毎年この時期は新商品の登録ピークを迎えますので、毎日たくさんの商品登録を行っています。
2~3か月先に発売する商品を登録することも多いので、季節を先取りしている気分もあります。最近の新商品登録には春の気配を感じます。
売場では1月15日の「いちごの日」あたりから、いちごのケーキや、サンドイッチ、パン、ドリンクなどいちごの商品がたくさん売られていました。ピンクのパッケージも相まってとても可愛らしく美味しそうですね。これからどんな商品が発売になるか楽しみです。
「分類」をするためのルール・定義
これまでの#1、#2にも出てきていましたが、「商品マスター」を構築/運用する際には、「品目(分類)」と「属性」を決定するための「ルール・定義」が必要になります。今回はここをテーマに深掘りしていきます。
「分類」は、何をどう見たいかによって変わってきます。
何を見たいのか、どんな切り口で見たいのか、見たい項目を何の情報を使って判断するのかなど、分類する際のルールや定義を考えることが商品マスターメンテナンスの重要な仕事のひとつです。
“最近注目されはじめている○○の商品のデータを見たい”という場合、一般的に決まった定義が存在していないことが多いです。例えば、最近では“完全栄養食”のデータを見たい、“日本ワイン”の商品のデータを見たい、といった話がありましたが、そんなときはまず「完全栄養食とは」「日本ワインとは」具体的に何を指すのか、分類するための定義を考え、明文化することからはじめます。
はじめに、見たい商品はどんな商品を指しているのかを調べてみます。共通するキーワードや商品の訴求、成分などを探して、おおまかな定義を考えます。(複数のお客さまからヒアリングをすると、案外想定している商品が異なることもあります)
次に、何のどの情報を見れば判断ができるかを考えます。
商品名から判断できるか、それとも商品パッケージからか、原材料まで確認しないと判断ができないか、など判断基準を決めます。
判断基準は、分類したい内容や公正さのレベルによって変わってくるため、それぞれに合わせて設定します。
また、商品によって、アピールポイントや訴求の仕方はさまざまです。
ここまでに考えたルール・定義で分類できるのかどうか、商品の実物を確認しながら検討することも重要です。
分かりやすいキーワードであれば判断に迷いませんが、微妙な書かれ方をしている商品だったら迷いますよね。
一旦、判断基準としてAパターンだったら該当、Bパターンだったら該当しないと決めてみます。そのうえで本当にBパターンだと該当しないというルール・定義は問題がないか、といったように実際の商品をチェックしながら分類の判断基準を調整していきます。
日々の登録でたくさんの商品を見ている知見を活かして、どこで線引きをするかなど細かなところも検討します。
こんな雰囲気のもの、こんな感じのものという基準にすることも考えられると思いますが、判断基準が曖昧であると、商品によって判断する人によって、分類結果にバラつきが出てしまいます。
判断基準を言語化して、該当する範囲、確認範囲を明確化する。そして多くのみなさんにその定義に納得して分析に使用してもらえるようなルール・定義をつくること、これが難しい部分ではありますが大切にしないといけないところでもあります。
「商品マスター」への新規商品の登録
作成したルールに則って日々商品の登録を行っていますが、「分類(品目)」「属性」を判断するのが難しい商品が出てくることはもちろんあります。
これまでになかった新しい切り口の商品が発売されたり、昔からある商品でも商品の訴求ポイントが変わったりすることも。
それらに対処していくために、気を付けていることがあります。
なぜその分類にしたのか説明できるように理由・根拠をもって判断すること
これまでに登録された商品と体系的に比較して判断すること
決めた分類・ルールを更新していくこと
新商品に対するアンテナを張って市場・トレンドに敏感であること
「商品マスター」の分類は、誰がやっても同じように判断できる客観的なものであること、多くの利用者にとって納得できるものになるように心がけています。
インテージ商品マスターの「分類(品目)」「属性」
わたしたちがメンテナンスしている、パネル調査で分析するための商品マスター(商品情報データベース)は、インテージ独自の商品マスター分類ルールで運用しています。一定のルールに則って運用をしているため、「標準」として使用することができます。
ほかにも、目的によって最適な分類の仕方は異なってきますので、ニーズに合わせた対応が必要になります。
例えば、商品が並ぶお店の業態や(スーパーかコンビニかドラックストアか)、お店の方針でどこの棚に置かれるのかによって、同じ商品でも見たい分類が異なる場合があります。製造メーカーが想定している分類と我々が考えた分類が異なることもあります。
そのような場合は、インテージの標準的な分類(品目)・属性の他に、お客さまの要望・ニーズに合わせた分類・ルール・定義の提案や整理を行い、それに則った運用まで提供することも可能です。
おわりに
2023年10月からの酒税法改正により、2026年までに段階的にビールの酒税が一本化されます。ビールは減税され、いわゆる新ジャンルといわれている「リキュール(発泡性)」「その他醸造酒」のビールは増税になります。
またこれにより酒税法分類が「リキュール(発泡性)」「その他醸造酒」のものは“発泡酒”に変わります。
どの商品がいつからどう変わるのか、これから情報収集を行い、分類を変更しないといけません。これはちょっと大変な作業になる予感がしています…。
長年商品マスターのメンテナンスを行っていても、その中身はどんどん変わっていきます。分類定義やルールも、根幹のポリシーは守りつつ、時代に合わせてブラッシュアップすることが必要です。
蓄積された情報が多ければ多いほど「変えないこと」と「変えること」を並行していくことは難しいですが、これからもその時代にあった価値のあるマスターになるように、みなさまのお役に立てるように、マスターメンテナンスのノウハウ・スキルを積み重ねていきたいと思います。