知床ぐらし体験ワーケーション
この9月に、会社のワーケーション制度を初めて利用し、夏休みと組み合わせて約2週間、ひがし北海道に滞在しました。
制度を利用する際のあれこれや、"知床ぐらし"を疑似体験したワーケーションの様子などをお話しします。システム開発のプロジェクトリーダーをやりながらワーケーションをするにあたっては、ほんのちょっとだけ意識したこともあるため、そのあたりもお伝えできればと思います。
自己紹介
データビジネステクノロジー本部の高橋です。ひがし北海道が好きなシステムエンジニアです。コロナ禍前までは、10年以上連続でひがし北海道に夏休みの旅行で訪れていました。
得意エリアは、網走~斜里~摩周~釧路をつなぐJR釧網本線沿いのエリアと知床半島北側、阿寒湖といったところです。
一番好きな季節と場所は、6月下旬~7月頭のつつじヶ原@川湯温泉です。硫黄山をバックに白いエゾイソツツジが一面咲き乱れるさまは本当に見事です。ここ最近はビデオ会議の背景画像にも使用しています。
その他の自己紹介については過去記事をご覧ください。
ワーケーション利用のきっかけ
当社は、いわゆる”夏休み”の日程が決まっておらず、個々人の都合にあわせて、6月~9月の間で5営業日、取得することになっています(”シーズン休暇”と呼んでいます)。
7月に異動したばかりのため、7~8月は業務やメンバーに慣れる時間が多く欲しいと考え、今年は9月にまとめて取得することにしました。
が、9月に特に行きたい場所がないのです。エゾイソツツジは6月だし…10月頭だったら知床半島北側でイベントがあるので行きたいのですが…。
せっかくの休みを無駄にしたくないなあ…。そう思っていた時に目に飛び込んできたのが、当社の久保田さんのワーケーションの過去記事でした。
この記事を読んで思い出したのは、北海道オホーツク総合振興局斜里町(しゃりちょう)のワーケーション施設のことです。見かけた時はまだワ―ケーション制度がなかったため「へ~、そんなものもあるんだ」程度の記憶でした。
今もやっているのだろうかと調べてみると、下記のことがわかりました。
無料……無料!?ホントに?
それに、居住スペースの写真を見ると、プチ移住のようで楽しそうです。ここなら"知床ぐらし"を体験できそうだなぁ。
はやる気持ちを抑え、運営団体である「一般社団法人知床スロウワークス」にメールで問い合わせ。
すぐに、「居住スペースは1人でも利用可能」「個室ゾーンも予約可能」「予約不要ゾーンに8月にテレキューブ導入予定なのでそちらを使ってもOK」との回答が届きました。
これは行くしかない!ということで、9月下旬に、しれとこらぼでのワーケーション&"知床ぐらし"の疑似体験をすることにしました。
ワーケーションのルール確認
前回のワーケーション記事から変更はないため、概要はこちらをご覧いただくのが早いです。
あと、上記記事には書いていないですが大事なこととして、「原則残業禁止」というルールがあり、これが今回一番大変でした。
どうしても、緊急度の高いタスクが突発的に発生する可能性は考えられるため、非常事態に陥らないよう、事前の調整・準備を対策しておく必要がありそうです。
色々考えましたが特効薬はなく、最終的には月並みですが下記のような対策に落ち着きました。
ワ―ケーションを取得することを事前に周囲に告知しておく
ワーケーション開始前に片付けられるものは対応しておく(ただし、前述の通り限りがあるので、わかる範囲で)
ワーケーション中は緊急度・重要度の高いタスクに絞って対応する(予定を詰め込まない)
ワーケーション開始後に頑張る
ワーケーションを取得するまで
会社に申請:申請時にスケジュールを立てておくのが大事!
なにはともあれ、会社に申請を出すのがまず第一です。
ワーケーション期間中のスケジュールを提出する必要があるのですが、そのスケジュールは「何月何日の何時何分から何時何分まで勤務、何時何分から何時何分まで休憩」等細かい提出が求められるため、事前にスケジュールをしっかり考えておかないと、申請に手間取るかもしれません。
私は今回、公共交通機関の時刻と定例会議の開催時間とを両にらみしながら、スケジュールを作成しました。
事前告知:周りの人に知っておいてもらう
関係者に迷惑をかけないために、事前にワーケーション予定を告知しました。必要に応じて日々の勤務予定時間もお知らせしておきます。
メール末尾の署名欄に、ワーケーションの予定を書いておいたり、Microsoft Teams のステータスメッセージにも、同様に予定を書いておいたり、もちろん、社内公開用のOutlookカレンダーにも記載したり。
事前に各所でアピールして、周知を進めました。
悩み:会社貸与のノートPCとスマートフォンの扱い
当社では従業員に業務用のノートPCとスマートフォン(スマホ)が貸与され、従業員はそれらを使って業務を行っています。当然ワーケーションでもノートPCとスマホは必須なのですが、これらをどうやってしれとこらぼに持っていくかが大きな悩みとなりました。
というのも、ワーケーション期間の前に”シーズン休暇”として一週間休みを取ったため、その休み期間中にノートPCやスマホを持ち歩くわけにもいかず、かといって一度自宅に帰るわけにもいかず…。なにかしらの対策が必要でした。
頑張って休暇中ずっと持ち歩く?いやいやちょっと心配の方が大きいな…
コインロッカー?いや、そもそもコインロッカーは「盗難の補償がない」「そもそも貴重品はロッカーに入れる事ができない」みたい…
損害保険に入る?…なんだかそんなぴったりなものはなさそうだな…
調べていくうちに、どうやら黒い猫がトレードマークの運送会社では「パソコン宅急便」という仕組みがあり、専用の箱に梱包することで安全に配達してくれるというサービスを発見しました。責任限度額も荷物1個あたり税込30万円までついています。
これですね。これを使いましょう。
わかってしまえばなんてことはなかったのですが、ワーケーションの先駆者がいないとこんなささいなことでもつまづきますね、というお話でした。
いざ、しれとこらぼへ!
ワーケーション開始日の前日。
知床斜里駅に降り、徒歩5分ほどでしれとこらぼに到着しました。
管理人さんにご挨拶し、しれとこらぼの案内を受けます。
案内を受けている最中に、タイミングよく、事前に送っていたノートPCとスマホが到着しました。無事届いてよかった。
しれとこらぼは、元々法務局の施設だった建物を再利用した建物で、1階がワーキングスペース、2階が居住スペースになっています。
また、1階は、予約不要ゾーンと要予約ゾーンに分かれており、予約不要ゾーンは共同スペース、要予約ゾーンは会議室のような部屋になっていました。
2階は居住スペースです。
この居住スペース、まるでつい最近まで人が住んでいたかのように、本当に何でもそろっています。しれとこらぼ到着直後から普通に住まうことができますね。
あ、ちなみにこの建物はセキュリティ面も万全です。なんせ道路を挟んで向かい側が斜里警察署ですから。
一週間居住するにはあまりに良すぎる環境で、ここが無料だと思うとむしろ若干の罪悪感すら覚えます。
ワークしてみる
チームメンバーとのやり取り:◎
普段からほぼ全員在宅勤務なので、オンラインでのやりとりが基本になっており、会議のしやすさや仕事のしやすさは何も変わりませんでした。
必要に応じてテレキューブも活用することで、チーム内の定期ミーティングなども、何の支障もなく進めることができました。
「本当に朝から晩まで仕事をされるんですね」
17:30に業務終了したとある日。
会議を終えてテレキューブから出ると、管理人さんが驚いた顔で
「本当に朝から晩まで仕事をされるんですね」
と話しかけてきました。
聞けば、しれとこらぼを利用する方は、一日フルに仕事をするというよりは、「午前中仕事、午後遊び」とか「必要なタイミングの数時間だけしれとこらぼを利用する」とかが多く、一日がっつり仕事をするケースは珍しいそうです。
確かに、しれとこらぼで出会ったテレワーカーさんは、午前中のみや数時間だけ利用している方が多かったような…。
仕方ないのです。そういうスケジュールを提出してしまったので。
バケーションしてみる
始業前・終業後のプチ観光
始業前に早起きして来運神社(らいうんじんじゃ)に足を運んだり、早めに仕事を切り上げた終業後に川湯温泉へ赴いて温泉の熱さを体感したり、時には近くのスーパーで手に入れた食材で夕食を作ったり。
住むように暮らす生活を贅沢に堪能しました。
モルック初体験!
またまたとある日。
午前中仕事をしていると、庭先で管理人さんたちが「モルック」で遊んでいる様子を見つけました。
やってみたい…!でも、事前申請と違う行動を「遊びたいから」という理由で事後変更するのっていいのかな…。
休憩時間になり、ダメもとで管理人さんに尋ねてみると、「モルックやってみますか?」とお誘いが!一も二もなく食いつきました。
調整いただいた結果、明日の私の休憩時間にモルックを持ってきてくれることに。なんかこう、町全体でテレワーカーを受け入れようという気持ちを感じますね。
そして翌日、お昼休みにモルックを初体験しました。
※モルックについての詳細は日本モルック協会のサイトへ!
やってみると、なかなか難しく、1勝もできないままプレイは終了しましたが、非常に楽しかったです。ボードゲームやビリヤードと似ているところが多く、どちらかが好きな人であれば、はまりそうなスポーツだと感じました。
そして、最終日
会議で埋め尽くされた午後を何とか乗り越え、17時に終業。
その日の18時までにノートPCを発送しないと、日曜の夜に荷物の受け取りができず、月曜朝からの仕事に間に合わなくなってしまうため、急いで発送手続きへ。なんとか間に合わせることができました。
その後、管理人さんたちが懇親会を設けていただくことになり、そちらへ参加。しれとこらぼ側からは一般社団法人知床スロウワークスの会長さんと管理人さんのお二人が参加してくださいました。
そもそもしれとこらぼは、斜里町ではなく一般社団法人知床スロウワークスという組織が運営管理している施設であり、管理人さんもそこの構成メンバーという形になっているそうです。
テレワーク事業を始めたきっかけや、斜里町の産業の話など、興味深いお話をいろいろ伺いました。
また、今年の11月に、しれとこらぼの利用経験者を集めたイベントを東京でやるというお話も聞けました。時間があったら参加してみようかな。
これで私の初めてのワーケーションは終了です。
しれとこらぼでの1週間は、まるで知床に移住したような気持ちになり、とてもよいリフレッシュとなりました。
しれとこらぼについての感想
システム開発のチームで業務を進めながらワーケーションをするうえで一番ネックになるのは、個人的には「いつでも音声通話できること」だと感じています。扱う情報量が多くかつ複雑なシステム開発では、文字情報だけでは伝わらないこともあり、音声(と相手の表情)での補完は大事だからです。
その点、しれとこらぼは「要予約ゾーンとテレキューブである程度セキュリティと音声通話が担保されつつ、予約不要ゾーンにいるテレワーカーさんとの交流が生まれやすい設計になっている」という点が長所だと思いました。
もちろん、居住まで含めて無料であることも大きな魅力です!
町全体でテレワーカーを受け入れようという気持ちが感じられるのも好印象でした。
最後に
しれとこらぼの管理人さんやしれとこらぼで出会ったテレワーカーさんに話を聞くと、もっと自由にワークしてる方々もいらっしゃるようでした。”ワーケーション”といっても、その利用方法やルールは様々でバラエティに富んでいるなぁと感じました!
当社はワーケーションの制度が設立してまだ初年度なので、これからの利用促進や制度のブラッシュアップが楽しみです。
チームで業務を進める職種であってもワーケーションはできますし、セキュリティの担保も、コワーキングスペースの会議室スペースを借りたり、ホテルの部屋を長期間確保したりすれば、なんとかなります。
ですので、このあたりの理由でワーケーションを躊躇していた方は、ぜひワーケーションをやってみることをお勧めします。単にリフレッシュになるだけでなく、他のテレワーカーや地元の方たちと交流する中で新しいビジネスの種を生み出せるかもしれませんよ。